第4章 利用できるAIツールと使い方のルール
4.1 ツール選定の原則
業務で使うAIツールは、安全に使えることを基準に会社が選びます。選定の主な基準は次のとおりです。
- 法人向けツールを優先:Microsoft Copilot、ChatGPT Team / Enterprise、Google Gemini for Workspace など、管理機能を備えた法人向け環境を優先する。
- 学習に使われない設定:入力したデータがAIの学習に使われない設定が可能であること。
- 管理機能:利用者の管理や利用履歴(ログ)の確認ができること。
- コスト・サポート・使いやすさ:料金、日本語サポート、現場での使いやすさも考慮して選ぶ。
4.2 ツールを使う際のルール
選んだツールを安全に使うため、利用にあたっては次のルールを守ります。
- 許可制:会社が許可したツール以外を業務に使うことは原則禁止。新しいツールを使いたい場合はAI導入責任者の承認を得る。
- 無料版・個人アカウントの業務利用禁止:入力内容が外部に公開・学習される恐れがあるため、業務情報の入力には使わない。
- シャドーAIの禁止:会社が把握・許可していないAIを、自宅のPCや個人のスマートフォン・個人アカウントで業務に使う「シャドーAI」を禁止する。情報漏洩や責任の所在が不明確になるため、業務は必ず会社が許可した環境で行う。
4.3 建設現場特有の留意点
生成AIの多くはクラウドサービスとして提供されます。図面・施工計画書・見積・現場写真などをクラウド経由で扱うため、日本建設業連合会「建設現場ネットワークガイドライン」を参考に、アクセス管理・データ保存・外部送信機能の制限などの情報漏洩対策を併せて整備します。
第5章 入力してはいけない情報(入力禁止情報)
AIに何を入力してよいか/いけないかを明確にすることは、情報漏洩を防ぐうえで最も重要なルールです。次の情報は、許可された法人向け環境であっても、原則として入力を禁止します。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 個人情報 | 従業員・顧客・協力会社担当者の氏名、連絡先、マイナンバー等。 |
| 顧客・発注者の機密 | 発注金額、契約詳細、顧客固有の課題、未公表のプロジェクト情報。 |
| 技術・工事情報 | 未公開の図面、特殊な工法ノウハウ、工事原価・単価、積算根拠。 |
| 現場写真・事故情報 | 近隣住民や個人が特定される写真、クレーム・事故記録。 |
※やむを得ず使う場合は、匿名化・要約化を行い、AI導入責任者の承認を得ることを条件とします。
出典:日本国土開発「R6 生成AI利活用ガイドライン」を参考に建設業向けに整理。

5.1 【推奨】文書に「AI入力可否」の表示を付ける
社内で作成・保管する文書(テンプレート、図面、見積、議事録など)に、その文書をAIに入力してよいかどうかの表示(ラベル)をあらかじめ付けておくと、利用者が判断に迷わず、情報漏洩事故を減らせます。<br><br><strong>表示の例:</strong>[AI入力可]… この文書はAIに入力してよい / [AI入力禁止]… この文書はAIに入力しない<br><br><strong>運用方法:</strong>ファイル名の接頭辞(例:[AI可]見積テンプレート)、文書の先頭への注記、フォルダ分け(AI可/AI禁止)などで表示する。テンプレート段階で表示を入れておくと定着しやすい。
第6章 守るべきルール
6.1 社員が守る3つの約束
- ハルシネーション(AIの誤り)を確認する:AIの回答をそのまま信じず、専門知識を持つ人が根拠を確認する。
- 著作権・権利侵害に配慮する:生成物が他者の権利を侵害していないか、既存の図面・文章・画像と照合する。
- 最終責任は人が負う:AIは「下書き作成者」であり、成果物の責任は担当した社員本人が負う。
6.2 確認ルール(成果物の取り扱い)
AIの出力は常に「下書き」と位置づけます。対外提出物は、担当者確認 → 責任者確認 → 必要に応じて根拠資料の確認、という段階を踏みます。安全・品質・契約・法令に関わる内容は、AI単独で判断せず必ず有資格者が確認します。

6.3 人による関与(ヒューマン・イン・ザ・ループ)
AIが自動で外部に作用する場面(メール送信、見積提出、データ更新などをAIエージェントに任せる場合)では、実行前に必ず人が内容を確認・承認します。これは『AI事業者ガイドライン(第1.2版)』が示す考え方です。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」別添(令和8年3月31日)
6.4 禁止する使い方
- AIの回答を確認せずに顧客へ提出すること。
- AIが示した法令・基準・仕様を裏取りせず使うこと。
- 他社の資料や写真を無断でAIに入力すること。
- 生成した画像・文章を、著作権確認なしに広告・提案書へ使うこと。
参考:STO Building Group「Generative AI Policy」(禁止用途・通報窓口・外部AI利用ルールの海外参考例)