第1章 なぜ今、建設業でAI活用が必要か
1.1 建設業が直面する課題
建設業は、深刻な人手不足、長時間労働、技能・ノウハウの継承難という構造的な課題を抱えています。2024年4月からは時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用され、限られた人員でいかに生産性を上げるかが経営の最重要テーマとなっています。
- 人手不足・高齢化:技能労働者の高齢化と若手の入職減により、現場・事務双方で慢性的な人手不足が続いています。
- 長時間労働の是正:時間外労働の上限規制への対応として、書類作成・管理業務の効率化が急務です。
- 技術・技能の継承:ベテランの暗黙知を、いかに若手や組織に引き継ぐかが課題となっています。
1.2 AI活用がもたらす効果
AIは、これらの課題に対する有力な解決手段です。見積・施工計画・安全書類・日報整理などの事務作業を効率化し、画像解析やセンサーデータの活用によって検査・安全管理の精度とスピードを高めます。下表は、建設業でAIが貢献しうる主な領域です。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 生産性向上 | 書類作成・情報検索・要約などの定型業務を効率化し、人がより付加価値の高い業務に集中できる。 |
| コスト削減 | 外注費の抑制、業務時間の短縮による原価低減。 |
| 技術・技能の継承 | 社内資料やベテランの知見をAIに学習させ、若手でも必要な知識にアクセスできる。 |
| 安全性の向上 | 過去の災害データや現場映像の解析により、危険を事前に察知し対策を講じられる。 |
出典:株式会社建設システム(KENTEM)「建設業でAIは活用できる?導入のメリットと有効な活用術」 https://www.kentem.jp/blog/construction-ai-utilization-tst/
第2章 基本理念と適用範囲
2.1 基本理念(6原則)
AIの活用にあたっては、便利さだけを追わず、人と社会への責任を果たすことが前提です。本ガイドラインでは、清水建設の「AI基本方針」を参考に、次の6原則を基本理念として掲げます。これらは国の『AI事業者ガイドライン(第1.2版)』が示す基本理念とも整合します。
| 原則 | 考え方 |
|---|---|
| ①人間中心 | AIは人の判断を支援する道具であり、最終判断と責任は人が負う。 |
| ②人権の尊重 | 差別やバイアスを助長せず、関係者の人権・尊厳を尊重する。 |
| ③法令順守・権利保護 | 個人情報保護法・著作権法等の法令を守り、他者の権利を侵害しない。 |
| ④安全性 | 人の生命・身体・財産、現場の安全に悪影響を及ぼさないよう配慮する。 |
| ⑤説明可能性・透明性 | AIの利用や判断根拠を、社内外に対して説明できる状態にしておく。 |
| ⑥ガバナンスと人材育成 | 利用ルールと体制を整え、全社員のAIリテラシーを高める。 |
出典:清水建設「シミズグループAI基本方針」/ 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)
2.2 適用範囲
- 対象者:自社の役員・社員、および自社業務でAIを利用する協力会社・委託先(必要に応じて契約で順守を求める)。
- 対象とするAI:文章・画像・コードを作る生成AI、画像・映像を判定する画像解析AI、災害・需要などを予測するAI、建機・ロボット制御AI、IoT・センサーと連携するAIなど。
- 対象業務:見積・施工計画・安全管理・品質検査・日報/報告・営業/提案・補助金申請・採用/広報など、社内のあらゆる業務。

2.3 関連規程との関係
本ガイドラインは単独の文書としてだけでなく、既存の情報セキュリティ規程・個人情報保護規程・就業規則と整合させて運用します(竹中工務店の運用を参考)。矛盾が生じる場合は、より厳しい規定を優先します。